Schaffhausen,
2018年
8月
27日
|
14:00
Europe/Amsterdam

クラフトマンシップと ハイテクの融合

IWCシャフハウゼンの新しいマヌファクトゥールツェントルム(Manufakturzentrum)では、伝統的な時計師の技巧と、最新の 製造方法およびテクノロジーが融合しています。ムーブメントパーツとケースの製造では、最新世代のターニング/マシニングセン ターが最高級の品質と精度を生み出します。これに対し、自社製ムーブメントの組み立ては手作業で入念に行われます。熟練した 時計師の手が加えられて初めて、機械でできた時計の心臓部は鼓動を始めるのです。

わずか21ヶ月の建設期間で、シャフハウゼン郊外にIWCの 新しいマヌファクトゥールツェントルムが完成しました。外観を ひと目見ただけで、IWCがこの建物を創立150周年の記念と して建設したことがはっきり分かります。黒いプロファイルを施 したガラス張りの壁と、前面に張り出した白い屋根がコントラ ストを生み出しています。

 

Christoph Grainger-Herr, CEO of IWC Schaffhausen
「創業者のフロレンタイン・アリオス ト・ジョーンズは、1868年にすでに伝統的な時計師の技巧と 先進的な製造方法を融合させていました。私たちはそれ以来、 彼が確立したエンジニアリング手法を一貫して発展させてきま した。新しいマヌファクトゥールツェントルムでは今でもクラフ トマンシップとハイテクが共存しています。しかし、この建物は、 製造の為に最高の環境であり、従業員にとって素晴らしい職 場環境であるに止まりません。マヌファクトゥールツェントルム はIWCブランドの精神を体現しており、世界中からここに訪れ るお客様は私たちの自社製ムーブメントとケースの製造を間 近に体験することができるのです。」
Christoph Grainger-Herr, CEO of IWC Schaffhausen

マヌファクトゥールツェントルムでは、ムーブメントパーツ、自 社製ムーブメント、ケースの製造が一箇所に集約されました。 これは、IWCの歴史における一つのマイルストーンです。これ によって、アンドレアス・フォル(IWCシャフハウゼンCOO)が長年抱き続けてきた夢がかないました。

Andreas Voll, COO of IWC Schaffhausen
「完璧な品質を生み出 すための最善の生産プロセスを実現する上で、新社屋の建設 は絶好の機会でした。ここには、たとえば原材料から個々の ムーブメントパーツ、そして自社製ムーブメント完成までの価 値創造プロセス全体が一つのフロアに合理的な順序で配置さ れています。私は、2007年にIWCで働き始めて以来、このこ とを夢見てきました」とフォルは語ります。」
Andreas Voll, COO of IWC Schaffhausen

最高の精度を生み出す 最新のテクノロジー

高さ9メートルの堂々としたエントランスロビーを抜けると、 ムーブメントパーツ製造部門に入ります。ここでは、キャリバー 52および82シリーズの自動巻きムーブメントや、キャリバー 59シリーズの手巻きムーブメント、キャリバー 69シリーズの クロノグラフムーブメントのコンポーネントなど、約1,500種 類のパーツが生産されています。また、メインプレートや受け、 ローターなどの複雑な構成部品のほか、スイッチレバー、ゼン マイあるいはロックエレメントといった小部品も製造されてま す。一部の部品は非常に小さく、肉眼ではほどんど見えない ほどです。この部門での仕事には、永久カレンダー、年次カレ ンダーまたはトゥールビヨンなどのコンプリケーションのコン ポーネント製造も含まれます。

機械式時計は、最大で数百種類にも上る個別パーツが休みな く働き続ける精巧な機械であり、そのため極めて高い精度が 要求されます。「たとえばキャリバー 52のメインプレートは、フ ライス加工によって約400の幾何学的特徴が与えられ、数千 分の1ミリの極めて小さな誤差範囲内で製作しなければなり ません」とフォルは強調します。そのため、ムーブメントパーツ 製造の加工工程は大半が自動化されています。コンピュータ 制御による最新世代のターニング/マシニングセンターでなけ れば、これらのパーツに求められる品質を確保することはでき ません。

たとえばキャリバー52のメインプレートのフライス加工は、複 数の真鍮ブランクを1回のセッティングで加工する最新鋭のマ シニングセンターが受け持ちます。このマシニングセンターで はツールや加工ポジションの自動変更が可能であり、最高レ ベルの精度を実現できます。原材料の搬送・供給と完成パー ツの取り出しは、垂直多関節ロボットが行います。

電気メッキによる 表面仕上げ​

ムーブメントパーツには電気メッキで必要な表面特性を与えま す。「ここで重要なのが腐食保護と外観です。ニッケルとロジウ ムのコーティングは、真鍮パーツの変色と緑青の発生を防ぐと 同時に、コンポーネントをシルバーホワイトに色づけます」と フォルは説明します。特に時間と労力をかけて行われるのが、 エングレーヴィングを施すムーブメントパーツの製造プロセス です。例えは最初の工程でバレルブリッジを完全に金メッキし てから、次にエングレーヴィングをラッカーでコーティングしま す。コート・ド・ジュネーブを施した後、パーツはメッキ槽でロ ジウムメッキされ、残ったラッカーを再度洗い流します。こうし て、エングレーヴィングは光沢のある金色の輝きを放つように なります。

手作業で入念に行われる 組み立て作業

ムーブメント組み立て部門は、ムーブメントパーツ製造部門に 直接つながっています。ムーブメントパーツの製造では自動化 レベルが高い一方、自社製ムーブメントの組み立ては一つひと つ手作業で行われます。複雑なメカニズムを組み立て、命を吹 き込むことは機械には不可能です。組み立ての前に、ブランク と受け(いわゆるエボーシュ)をその他のパーツと一緒に完成 させます。完成したアセンブリーは、その後、倉庫のパーツと 一緒に組み立てラインに送られます。そこでは、主にキャリバー 52シリーズや69シリーズの自社製ムーブメントを組み立てて います。

ムーブメントの組み立てのために開発されたラインコンセプト は、F.A. ジョーンズの先見的なアイデアに基づいて考案され たもので、その後も継続的に改良されました。組み立てプロセ スを複数の工程に分割することで、専門的なノウハウを持つス ペシャリストを個々の作業工程に配置することができます。「各 種のキャリバーシリーズの組み立てを専用のラインに振り分け ることにより、最高度の品質水準を確保できます」とフォルは その重要なメリットについて説明しました。従業員が自ら開発 した革新的な注油機も使用されています。これを使えば、ムー ブメント内に最大で数十箇所もある注油ポイントで極めて精 密な潤滑処理を行うことが可能です。

わずかな埃や汚れでも、ムーブメントの機能に悪影響を及ぼ すおそれがあります。そのため、組み立てはコンピュータチッ プの製造と同様の条件を備えるクリーンルーム環境で行われ ます。 1時間につき5万立方メートルの空気を循環させ、さらに、 超過圧力によって塵埃粒子の侵入を防ぎます。

ケース製造における 高い専門能力

ケース製造部門はマヌファクトゥールツェントルムの地下にあ ります。ここでは、ステンレススティールやチタニウム、プラチ ナ、レッドゴールド、ホワイトゴールド、ブロンズ製のケースを 製造しています。IWCは1980年代から、高度なケース素材の 加工に関して広範なノウハウを蓄積してきました。シャフハウ ゼンの最新の革新的素材はCeratanium®です。「このケース 用の革新的な新素材は、チタニウムと同様に丈夫で軽く、セラ ミックと同じ硬度とひっかき強度を備えています」とフォルは説 明します。

ケースは、単純なものでも多数の個別パーツで構成されてい ます。回転ベゼルやクロノグラフプッシャーなどの機能を加え ると、パーツの数はすぐに数十個を超えます。ブランクの加工 は、コンピュータ制御のターニング/マシニングセンターを使っ て個別生産で行われます。材料とケースの種類に応じて、長さ 1メートルのバーから30~50個のケースが作られます。フラ イス加工だけで、数時間を要することもあります。たとえば「ポ ルトギーゼ・グランド・コンプリケーション」のプラチナケース は、加工の難しい材料と複雑な形状のために非常に長い時間 をかけて製造されます。

切削加工の後、ケースは表面加工で研磨されます。最終クリー ニングと最終検査は、再度クリーンルーム環境に戻って手作業 で入念に行われます。「表面の品質を判定するのは人間の目で しかできません」とフォルは言います。

最新の方法も使いこなす スペシャリスト

ケース底部のエングレーヴィングには、機械的なエングレー ヴィングやエッチングの他に、レーザー彫刻も用いられます。 この最先端の方法は、高いプロセス安定性をもたらすだけで なく、エングレーヴィングのデザインにまったく新しい可能性を 開きます。

ケース製造のスペシャリストは、特に難度の高い各種の加工技 術をマスターしています。その一例がダイヤモンド旋削です。こ の切削技術は、主にレッドゴールドやブロンズに用いられ、特 殊研磨されたダイヤモンドで材料を除去し、カットと同時に圧 縮します。これにより、たとえば「ポルトギーゼ・クロノグラフ」 のレッドゴールドケースは、表面に独特の光沢を獲得します。

IWCシャフハウゼン

スイスの時計メーカー、IWCシャフハウゼンは1868年の創業 以来、永遠の価値をもつ時計を製造し続けています。技術革 新と創意工夫に情熱を傾け、世界的な名声を確立するに至り ました。そして、世界をリードする高級時計ブランドとして、究 極の精度と独創的なデザインを融合させ、高級時計製造のマ ニュファクチュールならではの傑作を世に送り出しています。 IWCは環境と社会に対する責任を果たす企業として、持続可 能な製造の実践、子供たちや若者を対象とする活動に取り組 む世界各国の組織の支援、そして環境保護を専門とする団体 との提携を行なっています。